第7波極大期に開催で六つの組の計93+α名が感染

「第48回夏の子ども会」におけるコロナ発生状況と考察
 22/10/27 COVID-19担当顧問 綾崎幸生

■はじめに

 新型コロナウイルス感染症の市中蔓延から三年めとなった今回の「夏の子ども会」は、折しも感染者の激増期に開幕し、低減が見え始めた頃に終わるという、ちょうど陽性者数グラフの台形が重なる中での開催となりました。昨夏以来、冬・春と感染を起こしてきましたが、感染力が強いオミクロンウイルスに占有されてフェーズが変わった今夏は、「おおた特別プラン」を含む全27行程のうち6行程で組内感染を起こし、その数は帰宅後発症を加えて93名※に上りました(原発症者9名は除く)。罹患者をはじめ、多くのご家庭に大変なご負担とご心配をおかけし、20以上のご家庭に現地へのお迎えをいただく状況を招きました(中には姉妹で二日続けての方も)。ここで改めて私どもの力不足を深くお詫びいたしますとともに、多くのお力添えに衷心より感謝申し上げます。
 他方、集合日毎に参加してくる未発症感染者への対処経験により、中盤以降は原発症罹患者の超早期発見と隔離に成功して感染を阻止できた組も4例ありました。また、特に罹患者の多かった「せせらぎ村」7組での感染状況の検討からは、会内での感染発生メカニズムもある程度の推定が成り立ちます。
 それらを今後の施策に活かすことが、発熱で苦しい思いをした子どもたちに少しでも報いる道だと考え、検討結果を含め報告します。扇風機や換気扇等を大量に使用していることが前提ですが、私どもの反省が少しでも団体宿泊行事等への参考になりましたら幸いです。
 
※他にも散発的に四つの組から計5名の帰宅後発症報告が届いていますが、いずれも散発かつ少数で、組内感染の確認ができませんでしたので、本稿では除外します。
 

■93名という数は多いのか

 一般には合計で百名近いと聞けば驚かれるでしょうが、夏全体ではリーダーを含め2,200名以上が参加したため、学校にたとえれば35名学級に1.5人弱と同程度の割合です。全員が軽症もしくは無症状のため、この値が、参加で得られる体験とのトレードオフにおいて許容できる範囲なのか、あるいは限度を超えているのかは各ご家庭の事情や考えによりましょう。会としては「もし感染したとしても『参加して良かった』と、全ての子どもたちに思ってもらえるように」と謳っていましたので、今の所アンケートでは評価いただいていますが、その点が本当にどうだったのか、少し長い目で今後のご指摘やご意見等にも注目しなければいけないと捉えています。
 ただし、後半の感染阻止実績を見れば、前半でも感染予防ができたのではないか、7組での感染拡大はもっと抑えることが可能だったはずだといった悔いが強く残っています。
 なお、6行程のうちS1組だけは組内での原感染者を特定できず、併行して感染が起きたB組は宿舎が異なり接点も極めて限定的なため、同宿舎で一部併行した3・4組を含む組内の不顕性保菌者からの感染可能性があると思われます。
 

■特筆される、班による偏りの無さ

 集団感染を起こした5・7・B・E・S1・T2の六つの組それぞれの班毎の感染者数を下表に示しました。全体を眺めると、いずれも発症者の属する班に偏りが少なく、まんべんなく出ていることが読み取れます。特に5組では、恐ろしいほどに均一です。表では判りませんが、熱の出方、すなわち感染した順序についても、後述の7組を除き、発症は概ね平均的に見られました。昨夏に唯一の感染を起こしたK1組では、班毎に罹患者数に大きな違いがあり、また発熱順序からも班内での感染が強く疑われましたので、今回はそこが全く異なる点です。
 この事実は何を意味するでしょうか。詳細は割愛しますが、所属班の他に、集散地往復のバス車両、就寝した部屋、性などの違いを合わせて、次の推定が成り立つのではないかと考えています。
 班活動や食事での感染はほとんど起きていない
 就寝時(含テント)は感染がほとんど起きていない
 入浴時の感染はあまり起きていないだろう
 バスでの感染はあまり起きていないだろう
 これらは換気・空気撹拌の徹底と黙食や黙浴の実施が一定の効果をもたらしているためと言えるでしょう。
 
【表】各組班毎感染者数 [画像はこちら]

組\班 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
5 1 0 0 1 1 1 3 1 2 1 2 1 1 2 1 1 1 20
7 0 3 4 4 4 4 4 2 1 2 0 1 0 2 2 1 1 35
B 2 0 3 1 4 0                     1 11
E 0 3 2 0 3                       0 8
S1 3 1 4 0 4 3                     0 15
T2 2 2 0                           0 4

 人数は子どもとリーダーの合計、班の「他」は班を受け持たず組全体に関わるリーダー

■7組で露呈した二つの危険シーン

 上表の7組では、1~8班と9~16班に感染者数に段差があることが読み取れ、前半班の合計は後半班の合計の約2.8倍です。5組では後半班が前半班の1.4倍弱ですから、偏りの大きさが歴然としています。実は7組では、8月18日朝の健康観察時に、突如5名の発熱者が出て、その全てが1~8班に集中していました。
 そこで、単純に潜伏期間も発症時も皆同じで一班8名×16班と仮定して、発症者5名全員が前半班に入る確率を計算したところ、約2.88%と出ました。無論、可能性の問題ですが、97%以上の確率で前後半に分かれて実施した行事で感染が広がった恐れがあることが解ったのです。それは、室内でのうた・ゲームが考えられました。この組で真っ先に発熱した原発症者が前半班におり、さらに、その会場では積まれた布団などが邪魔になり確かに換気が不十分だったのではないかといった指摘もありました。従来全員一緒にやっていたうた・ゲームを前後半に分けた所まではよかったのですが、換気が甘くなっては意味が半減です。
 それでも、班活動や食事では感染しにくいのに後半班にも広がった理由は何でしょうか。その解は班長会にあると疑われました。班長16名からの発症者が多く、「後から思えば」班長会は比較的長時間、換気のあまり良くない場所で開かれていたとの由。オミクロンウイルスではことさらよく言われるように、マスクの感染防止力は限定的です。以降の組では班長会を二分したり屋外で開いたりの改善を図りました。そもそも、組毎の感染リスクは組の総人数と泊数の積で表すことができ、7組は今夏の関門だと予想されていただけに、少しの油断が招いた結果を大きな教訓とせねばなりません。
 その他の反省としては、5組の罹患者におけるリーダー割合の高さから、リーダーミーティングでの感染と、それが多くの班に広げた一因になった可能性を挙げておきます。これも元々注意喚起がされていましたが、長時間に及びがちなことや子どもたちの就寝後に気が緩みやすい点などを、再度認識しておくべきでした。
 

■罹患者超早期発見の手順と対応

 健康観察を厳密に実施するため、従来は様子見にしてきた微熱範囲の発熱者が連日のように出ましたが、そうした子を早めに別室で見ることで、倦怠感等から不調を峻別し、いち早く隔離できるようになりました。一時的な微熱の場合には参加できない行事が出てしまいますが、感染防止を最優先したことで、終盤各組では誰にも感染を起こさずに済みました。また、健康カードに書かれた、家庭への連絡タイミングも、容態により迎えを検討・調整いただくために、選択に関わらず早い段階に電話で行い、帰宅がスムーズになって子どもの負担を減らすことにつながりました(当然ながら、遠隔地からの参加などの他、お迎えが困難な場合は当地で問題無く療養を続けました)。
 また、子どもの発熱の推移(出方)から予想を立てて、会期終盤では発症から規定の24時間を待たずに、医療用体外検査薬(定性抗原検査キット)を積極的に用い、早期判定→早期連絡→早期帰宅を実現しました。発症からの時間が浅い場合の陰性結果は信頼性が低くても、陽性結果が出ればそれが覆ることはまずないからです。
 ちなみに、組を連続で参加するリーダーに抗原検査を行うようにしましたが、これは意味の無い、もしくは意味の薄いものでした。なぜなら、検査薬は発症後24時間の経過で本来の性能を発揮するものであり、感染していても未発症者は堂々と陰性を示すからです。実際に検査で陰性だったリーダーが翌々日に発熱し、その間に感染を起こした例がありました。
 

■ポストコロナに向けて

 今回は車中や屋内のうた・ゲームを減らしたり帰路バスの黒糖パンを飴に代えたり、野外でも歌唱時のマスク着用や黙食や黙浴を励行するなどの感染防止策を採りました。しかし、それでなくても普段のさまざまな制約によりストレスを溜めて荒んでいる子が少なからずおり、不登校児童・生徒は急増中です。子どもやリーダー同士が顔を覚えられずに関係が希薄になっている深刻な状況も顕在化しています。子どもたちにそうした「我慢」をいつまで強いるべきなのでしょうか。
 ご承知の通り、人の生活は全てリスクと利益の比較の中で営まれている訳ですが、ウィズコロナからアフターコロナに移行する中で、危険度や必要とする対策への認識が個人によって大きな落差を生み、問題となるでしょう。それはリーダーたちも例外でなく、今後はマスク着用や黙食・黙浴の是非などにも意見が分かれる恐れがあります。うわべや目先ではない子ども集団の利益を考え、学びと議論を重ねて、感染防止策の緩和に向けた感染予防の確立という難題克服へ、努力を重ねてまいります。
 
 ●抗原検査はロシュ・ダイアゴノスティックス社製の医療用体外検査薬「SARS-CoV-2 ラピッド抗原テスト」を用いて行っています。
 ●本稿は会報『くさぶえ』22年10月号掲載記事に加筆、修正したものです。