ツキノワグマへの考え方と対策
各地でクマなどの野生動物による被害が頻繁に報じられ、ご心配の方も多くいらっしゃることでしょう。そこで、現地の野生動物の状況と対策についてお知らせします。
長野県では1994年から活動する「NPO信州ツキノワグマ研究会」が専門的知識を活かして積極的に対策へ関わっており、クマの行動様式や環境利用、農業被害との関連などに、多くの知見が蓄積されてきました。県の「特定鳥獣保護管理計画(ツキノワグマ)」には、非致死的な手法によるクマ対策が明記されています。
■生息域と危険性
創立以来の50年間の会活動で、2021年に一度のみ、シカやイノシシを捕るための「くくりわな」にかかったツキノワグマに遭遇したことがあります。班ごとのハイキング中に、リーダーから「クマのような動物を見かけた」と通報があったため、すぐに子どもたちをキャンプ場まで退避させ、その後の散策は中止しました。そこは八幡キャンプ場から山に約500m入った場所で、駒ヶ根市役所に連絡したところ、担当者が麻酔で眠らせて捕獲し、本来の生息地である南アルプス山域に運び放たれました。そのクマはわなによる創傷から見て、数日前からずっとそこで囚われていた若い個体だろうとのことでした。その夏は、ハイキングのたびに念のため車でクラクションを鳴らしながらコースを周回しました。
この件以来、駒ヶ根市の公式SNSを通じて、当会の活動地域である駒ヶ根市東伊那の安全情報を随時把握しています。伊那谷では従来より、夏期にはクマの目撃情報が頻繁にありますが、それらは天竜川より西側の中央アルプス山麓に集中しており、私どもの活動域である駒ヶ根市東伊那側(竜東地区)では、めったに目撃されることがありません。なお、秋には現地スタッフがキノコを採りに会のハイキングエリアを頻繁に歩きますが、クマを見た者は長年にわたり一人もいません。もちろん、今まで出なかったから安心ということではありませんので、引き続き、情報収集に努めます。
ちなみに、長野県内の2025年のツキノワグマ目撃情報数は、前年よりも減っています。一時増えていたホンシュウジカは地域一帯に設置された防護柵により、近年ほとんど生息痕跡すら見ることがなくなりました。イノシシについても、農業被害はほぼありません。キツネ・タヌキ・ハクビシンなどは、人の気配で姿を隠します。
■対策
●単独行動の禁止と活動時間
子どもだけでの屋外自由行動は、基本的にありません。また、やまびこ村のように、参加者が小学3年生以上で、プログラムが決まっていないコースなどの場合、広場から宿舎などの移動を子どもだけで行うタイミングはありますが、範囲や時間、目的をしっかりと区切って実施するようにしています。いずれにしても単独行動はかたく禁じており、リーダー間ではもちろん、子どもたちにもその危険性を訴え、班の仲間と行動するように伝えています。
また、クマは朝と夕方に出遭いやすいとも言われており、「夏の子ども会」にはナイトハイクという行事があるため、大きな音を立てたり熊鈴や煙の匂いを使ったりするなど、クマに忌避される方策を検討します。 なお、会の活動エリアは10~5月の間に暖房が必要なほど寒さが厳しく、「冬の子ども会」と「寒中子ども会」はツキノワグマの冬眠期間です。昨今、他県の冬眠しないクマの出没が報じられていますが、冬にクマが目撃された話は聞いたことがありません。
●生ごみや食品の管理
キャンプ場では、長年、生ごみ穴を使用してきましたが、クマなどを誘引する原因になりかねないため、代替策を検討中です。また、食品の管理もこれまで以上に確実に行うように手順を見直します。
●ハイキング前の見回りと歩行中の会話
開催前に、目印の札をつける際に、大人が二人一組で車で周り、安全確認を行います。そして、行事開始の直前にも、同じように車でコースを巡って安全確認と牽制を行い、子どもたちには歩行中の会話をにぎやかにして、人の存在をアピールするように働きかけます。
●万一の遭遇時
クマに出遭ってしまった場合のとるべき行動について、リーダーには長野県や環境省が出している啓発パンフレットを配布し、宿舎には同様のポスターを掲出する予定です。その内容を通じて、遠くに見かけた場合、近くで遭遇した場合、さらには攻撃を受けそうになった場合と、それぞれの対応をしっかりと周知しておきます。
「クマ撃退スプレー」の使用は検討しましたが、簡単に適正噴射できるものではないため、また、専門家は「何より出遭わないことが重要」としていますので、まずは遭遇しないための対策に力を入れます。
リスクを決して軽視することなく、子どもたちの安全を第一にしっかり情報を収集して、自然の中で遊べるように対策をとってまいります。
(2025年11月公開、12月更新)
■ご参考 長野県公式ホームページ ツキノワグマ対策について~県民の皆様・長野県へ訪れる皆様へ~
(公財)日本自然保護協会 2025年のクマによる人身被害の増加とその対応についての現状認識
■下図 2025年9月の長野県市町村別ツキノワグマ目撃数(駒ヶ根市は9月8日=通報2件のみ)
