あしたのむこうがわ <58>
あっと言う間に大人になってしまう子ども
綾崎幸生

 夜遅く、帰宅した長女が少しして突然「お願いがある」と正座するので、まさか妊娠したので結婚資金を貸して欲しいとでも言うのではあるまいなと身構えたら、娘を自宅まで送り届けた彼氏が駅で終電に乗り遅れたので家に居させて欲しいとの由。なぜ「泊めて」でないかは、始発まで4時間くらいだしリビングでDVD観ながら話するだけだから、らしい。
 突然のかなり面白い展開ですが、私が彼の立場だったら絶対に(未紹介の)親父になんか会いたくもないし、24Hネットカフェもあるのでまず来ないだろうと踏んで快諾したところ、今時の若者だねー、K君登場。せっかくの来訪なのに、妻はもうスッピンだしパジャマだからと、会いもせずに寝室へ。仕方なく、学生と飲み慣れている私が、面接官にならないようにできるだけ質問(尋問だったりして)を控え、極めて普通に相手をするしかありませんでした。
 家で目の前の幼子を毎日相手にしている時期は、一体いつになったら手がかからなくなるのだろうとか、早く成長して欲しいなどと願うものですが、本当にすぐに大人になってしまう現実に、物足りなさと感慨が交錯するのです。
 リーダーたちが子ども会の集散地で着用している赤や青のワッペンを新人に渡す際には、2024年の「第50回夏の子ども会」まで使うことを伝えています。それは、スタッフの目印をかつての腕章から代えた際に、遠い将来のつもりで冗談半分に宣言したのが始まりでしたが、それからもう二十数年が経ち、あとわずか14年となってしまいました。
 「わずか」と言うのも、無論私が歳を取って年月が早く感じられる証拠ではありますが、公式ウェブサイトは開設から早11年半が経っていますし、現在30歳前後のスタッフが中学生リーダーになったのもそんなに昔のこととは思えないからです。この夏に私は集合地で、かつて中学生リーダーの一期生だった保護者と実に29年ぶりに再会しましたし、また先日の「秋の親子会」では隣席にいた母親が、毎夏参加していた良く知っている「子」だったので、まるでタイムマシンに乗ったような驚きでした。
 子どもが大人に「すぐに」なるかどうかはともかく、今の中学生が親になるころにこの会が第50回を迎える訳です。敢えて誤解を恐れずに言えば、36年間にわたり再来率を高めながら続けてきたものをあと14年やることは視程内であり、さほど難しいことではないでしょう。ならば目標をどこに据えるべきか、そんなことを思ってふと気づくと私にとって死後はるか先であるのは間違いない第100回の2074年も、今二十歳のリーダーにとっては八十代半ば。まだかなりの人が存命のはずです。
 もしも、64年の先を遠い夢ではなく、実際に向かう標的と設定するならば、そのためにやるべきことを考え、それを達成するために何をやらねばならないかを見つめ、そもそも、後続の人々に100回をめざしてもらえるような実効ある努力の積み重ねが必須です。さまざまな手法を引き継ぎ、時代の変化に即しつつ変えないことは決して変えず、つまるところ常に「今」にベストを尽くす必然性が生じます。
 百里の道も一足から。長期的な視野で着実な対応を続ける姿勢は、子育てにも通じるのではないでしょうか。
あやざきゆきお=会代表
[機関紙『くさぶえ』 10年12月号掲載]
[バックナンバーリストへ]   [コラムトップへ]