コロナ感染者数が激減の一途をたどっていた先月、全リーダーを対象とした秋期研修会を名古屋・大阪・東京の順に行うことができました。そして、従来なら恒例の学生・社会人を対象とした懇親会を、久しぶりに開くことにしました。そうしたら、まだ東京では5名以上のグループには酒類を提供できないとのことで、私は45年間にわたる飲み会人生において、初めて「ノンアルコール限定の飲み会」に出席することに相成りました。
ある大学2年生が「居酒屋に行ってみたいという入学前からの望みがやっと叶った」と語ったのが象徴的ですが、当然ながら大学1・2年生の大半が飲み会というものに出るのが全く初めてで、お作法も知らない訳です。年の離れた初対面の人と話せないどころか目も合わせられない、同じテーブルで誰かが喋っている間に何人かがスマホをいじり始めている……。子ども会のリーダーでさえ、この有り様ですから、これは大変な事態になっていると感じました。
●
例年8割の学生がサークルに入る明治大学では昨春の加入率が実に1割を切ったそうで、多くの大学では緊急事態宣言下での対面活動が禁止され、中には入会勧誘自体が禁止された所もあります。別の調査では、今春になっても全国の大学でサークルに入った新入生は1割程度しかないとのこと。そうなると一般的に2~3年生を中心に動く学生団体は、活動自体が成り立ちません。コロナ前からのメンバーが卒業まで熱心に活動を続けたり、何十年も続く卒業生からの支援が厚かったりする団体でないと、存続は難しいでしょう。
新歓も合宿も学祭も追いコンも、それぞれが多様な先輩や同輩や後輩に向き合う力を得る重要な活動ですし、元々いろいろな人に出会いたいと、単科大ではなく総合大を選んだ学生にとってはなおのこと、他学部生との交流機会が失われてしまいました。
他方、講義も多くがオンラインで、それによって激増した課題に追われる毎日が続いてほとんどを家で過ごし、アルバイトをしたくても飲食ダウンにより口が限られ、ボランティアの募集も学校側から停止されています。そうした面でも学生は割を食っており、対人力を養えないばかりか、あるアンケートでは「友だちが一人もできない」という新入生が3割にも達していて、大変心配です。
もちろん、オンラインの活動には利点がたくさんありますが、それはそれとして、例えば教室まで歩く間にたまたまそこにいた顔見知りと話したことで友人になるとか、講義後に解っていそうな誰かに質問して親しくなるとか、そんな余白から生じる人間関係は、対面でなければほぼ始まりません。リモートワークが多い職場で指摘されている通り、会議の前後やプレゼン前などのスキマ時間に出る有意義な会話もオンラインでは期待できません。そもそもそれは信頼や親交の上に得られる果実でしょう。
大学当局は対面授業や課外活動の重要性と感染リスクを比較してオンライン化や中止、禁止を選択しました。それでも、今後に備えては、前例を踏襲するのではなく、対策の有効性やそれによる損害を細かく再検討して、学生の真の利益について深い議論を経たうえで策定して欲しいと願います。
綾崎幸生(あやざきゆきお)=会顧問
[会報『くさぶえ』 21年12月号掲載]